三年前に亡くなった母の葬儀費用は、最終的に、ほぼ100万円でした。この金額が、高いのか安いのか、私には今でもよく分かりません。しかし、一つだけ確かなことは、その100万円という支出があったからこそ、私たちは、母らしい、温かいお別れをすることができた、ということです。母は、生前、花が大好きで、小さな庭をいつも色とりどりの花で満たしていました。そして、交友関係が広く、いつも友人たちに囲まれて、楽しそうに笑っている人でした。そんな母の葬儀を、私たちは「家族葬」という形で行うことに決めました。しかし、それは、ただ費用を抑えるための、寂しい家族葬ではありませんでした。母の友人たちにも、最後のお別れをしてもらいたい。そして何より、祭壇を、母が好きだった花でいっぱいにしたい。それが、私たち家族の、共通の願いでした。葬儀社との打ち合わせで、私たちは、その想いを率直に伝えました。そして、提示された見積もりは、約95万円。当初、私たちが漠然と考えていたよりも、少し高い金額でした。その費用の多くを占めていたのが、私たちが希望した「生花祭壇」の料金でした。しかし、その祭壇のデザイン画を見た時、私たちの迷いは消えました。そこには、母が愛したピンクのスイートピーや、白いトルコギキョウが、まるで春の庭のように、優しく、そして華やかに咲き誇っていました。「これなら、お母さん、きっと喜んでくれるね」。私たちは、そのプランでお願いすることにしました。葬儀当日、斎場に現れた祭壇は、私たちの想像をはるかに超える、素晴らしいものでした。参列してくれた母の友人たちは、その花祭壇を見るなり、「まあ、〇〇さんらしい、素敵なお花畑ね」と、涙ぐみながら微笑んでくれました。通夜振る舞いの席も、精進落としの席も、母の思い出話と、笑い声に包まれていました。最終的な請求額は、飲食費が少し増えたこともあり、約103万円。ほぼ、100万円でした。この金額で、私たちは、母の人生を象徴するような美しい花祭壇を贈り、母を愛してくれた多くの友人たちと、温かいお別れの時間を共有することができました。100万円は、決して安い金額ではありません。しかし、それは、母への、私たち家族からの、最後の、そして最高のプレゼントだったと、今、心からそう思っています。