故人との最後の別れの際、生前愛用していた品や好物などを一緒に棺に納めてあげたい、と願うのはごく自然な気持ちです。これらの品々は「副葬品」と呼ばれ、故人の旅立ちに彩りを添えるものですが、何を納めても良いというわけではありません。火葬の安全性やご遺骨への影響を考慮し、棺に入れてはいけないものが厳しく定められています。まず、金属類、ガラス製品、陶磁器などは絶対に入れてはいけません。メガネや腕時計、指輪、ビン類などがこれにあたります。これらは高温でも燃えずに溶け、火葬炉の設備を損傷させたり、ご遺骨に付着して傷つけたりする原因となります。故人が愛用していたメガネなどは、火葬後に骨壺のそばに添えてあげるのが良いでしょう。次に、プラスチックやビニール、化学繊維製品も避けるべきです。これらは燃焼時に有害物質を発生させたり、溶けてご遺骨を汚損したりする可能性があります。ゴルフクラブや釣竿などの趣味の品も、素材によっては入れられないことが多いので注意が必要です。また、意外に思われるかもしれませんが、スイカやメロンなど水分の多い果物や、分厚い本も副葬品には不向きです。これらは燃焼の妨げとなり、火葬時間が長引いたり、不完全燃焼の原因になったりします。ペースメーカーを装着されている方が亡くなった場合は、必ず事前に葬儀社や火葬場に申し出なければなりません。申告せずに火葬すると、炉内で爆発し、大変危険です。では何なら入れて良いのかというと、基本的には「可燃性のもの」です。手紙や写真、千羽鶴、少量の生花、綿や絹などの天然繊維の衣類などが一般的です。故人を想う気持ちは尊いものですが、その想いを安全な形で届けるためにも、副葬品のルールは必ず守り、不明な点は葬儀社の担当者に確認することが大切です。