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互助会とポイントカードの違いとは
葬儀の費用に備えるためのサービスとして、古くから存在するのが「互助会」です。この互助会と、近年登場した葬儀社の「ポイントカード(会員制度)」は、どちらも生前に加入し、いざという時に特典を受けられるという点で似ていますが、その仕組みと性質は、全く異なります。この違いを正しく理解しておくことは、自分に合った備えを選ぶ上で非常に重要です。まず、「互助会」の仕組みです。互助会は、結婚式や葬儀といった、将来の冠婚葬祭に備えるため、毎月、一定の掛金を積み立てていく、というシステムです。そして、実際に葬儀を行う際には、これまで積み立てた総額に応じた、グレードの祭壇や棺などが提供される「権利」を得ることができます。いわば、サービスの「前払い予約」に近い形です。メリットは、月々の負担が少なく、計画的に高額な儀式に備えられる点。デメリットは、途中で解約すると、手数料が引かれて、積立金が全額は戻ってこないことが多い点や、提供されるサービス内容が固定されており、自由度が低い場合がある点です。一方、「葬儀社のポイントカード(会員制度)」は、多くの場合、入会金(数千円から一万円程度)を一度支払うだけで、会員資格を得ることができます。月々の掛金は発生しません。そして、会員になることで、葬儀の基本料金が割引になったり、様々な特典を受けられたりします。ポイントが付与される場合は、葬儀費用の支払い後に、その額に応じて付与され、次回の法事などで利用できる、という形が一般的です。これは、サービスの「前払い」ではなく、あくまで「顧客割引」の一種です。メリットは、入会金が比較的安価で、月々の負担がないこと。デメリットは、互助会のように、高額なサービス内容が保証されているわけではない、という点です。どちらを選ぶべきか。それは、あなたの価値観と、準備に対する考え方によります。コツコツと積み立てて、将来の儀式内容を確定させておきたい、という安定志向の方であれば、互助会が向いているかもしれません。一方、特定の会社に縛られず、いざという時には、複数の選択肢の中から、自由に、そして割引価格で葬儀を選びたい、という柔軟性を重視する方であれば、ポイントカード型の会員制度の方が、適していると言えるでしょう。
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葬儀費用100万円は高いのか安いのか
大切な家族の葬儀を考える時、多くの人が気になるのが「費用」の問題です。その中で、「100万円」という金額は、一つの大きな目安として語られることがよくあります。では、この葬儀費用100万円というのは、果たして高いのでしょうか、それとも安いのでしょうか。その答えは、一概には言えません。なぜなら、葬儀の価値は、その金額だけで測れるものではないからです。各種調査機関が発表している、葬儀にかかる費用の全国平均は、飲食費やお布施などを含めると、おおむね120万円から150万円程度で推移しています。この数字だけを見ると、100万円という金額は、平均よりもやや安い、ということになります。しかし、この平均値は、あくまで全国の、あらゆる形式の葬儀を合算したものです。参列者が100人を超えるような大規模な一般葬もあれば、ごく身内だけで行う10人程度の家族葬も含まれています。当然、前者であれば200万円以上かかることも珍しくなく、後者であれば50万円程度で済む場合もあります。つまり、葬儀費用100万円が高いか安いかを判断するためには、その金額で「どのような内容の葬儀ができるのか」という、内訳を詳しく見ていく必要があるのです。例えば、参列者が50名程度の、標準的な規模の家族葬を、通夜と告別式の二日間で行う場合、100万円という予算は、十分に心のこもった、満足のいくお別れができる、一つの適切な目安と言えるかもしれません。しかし、同じ100万円でも、儀式を省略した直葬(火葬式)であれば、それは非常に高額な費用となります。逆に、100名以上の一般葬を100万円で行おうとすると、祭壇が非常に簡素になったり、返礼品のグレードを下げざるを得なかったりと、どこかで無理が生じる可能性があります。大切なのは、平均費用という漠然とした数字に惑わされるのではなく、自分たちがどのようなお別れをしたいのか、誰に参列してほしいのかを明確にし、その希望を実現するために、100万円という予算を、どのように賢く配分していくかを考えることです。
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葬儀で流す曲がどうしても決まらない時
「故人らしい葬儀にするために、音楽を流したい。でも、故人に、これといった『好きな曲』が思い当たらない…」。そんな悩みを抱えるご遺族は、実は少なくありません。音楽にあまり興味がなかった方や、特定の曲を聴き込む習慣がなかった方の場合、その人を象徴する一曲を、残された家族が選ぶのは、非常に難しい作業です。そんな時、どのように考え、曲を選べば良いのでしょうか。まず、視点を少し変えてみましょう。「故人が好きだった曲」が見つからないのであれば、「故人と一緒に聴いた、思い出の曲」を探してみるのです。例えば、家族旅行の車の中で、いつもカーラジオから流れていた、あの頃のヒット曲。夫婦でよく観に行っていた、映画のテーマソング。子供の運動会で、毎年かかっていた応援歌。これらの曲は、故人個人が好きだった曲ではないかもしれません。しかし、そこには、家族と共に過ごした、かけがえのない「時間」と「風景」の記憶が、深く刻み込まれています。その曲を流すことで、参列者は、故人との温かい思い出を、より具体的に、そして共感的に、心に思い浮かべることができます。それでも、しっくりくる曲が見つからない場合は、「故人の人柄やイメージ」から連想して、曲を選ぶ、という方法もあります。例えば、いつも穏やかで、優しかったお母様なら、ショパンの「ノクターン」のような、優美なピアノ曲。豪快で、いつも仲間たちの中心にいたお父様なら、ルイ・アームストロングの「この素晴らしき世界」のような、温かく、包容力のあるジャズ。その人のイメージに合った曲は、たとえ生前に聴いたことがなくても、不思議と、その人らしさを、会場にいるすべての人に伝えてくれます。そして、どうしても選曲が難しい場合は、無理にポップスなどを選ばず、プロである葬儀社の担当者に相談し、「葬儀の雰囲気に合う、定番のクラシック曲や、ヒーリング音楽」のリストの中から、いくつか試聴させてもらい、その中から、最も心に響くものを選ぶ、というのも、賢明な判断です。大切なのは、完璧な一曲を見つけることではありません。故人のことを、一生懸命に想い、考え、悩みながら、曲を選ぶ。そのプロセスそのものが、何よりの供養となるのです。たとえ無音の葬儀であったとしても、あなたの心の中には、故人への、世界で一番美しいメロディーが、きっと流れているはずですから。
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葬儀の弁当手配で葬儀社に頼むメリット
葬儀で振る舞う弁当は、多くの場合、葬儀を依頼している葬儀社を通じて手配するのが、最も一般的で、そして賢明な選択と言えます。なぜなら、そこには、ご遺族の負担を軽減し、おもてなしの質を高めるための、数多くのメリットが存在するからです。まず、最大のメリットは「手間が一切かからない」ことです。ご遺族は、深い悲しみと、様々な準備に追われる中で、弁当屋を探し、メニューを比較し、人数分の注文をし、配達時間や支払い方法を調整する、といった煩雑な作業を行う余裕は、ほとんどありません。葬儀社に依頼すれば、カタログの中から、予算や希望に合った弁当を選ぶだけで、後の手配は、すべて葬儀社の担当者が代行してくれます。これは、ご遺族にとって、計り知れない負担軽減となります。次に、「質の高い、葬儀に適した弁当を、確実に手配できる」という点です。葬儀社は、長年の経験から、どの仕出し業者が、美味しく、衛生的で、時間通りに配達してくれるか、といった情報を熟知しています。また、葬儀という特別な場にふさわしい、縁起の悪い食材を避けたメニュー構成や、上品な盛り付けといった、専門的なノウハウも持っています。ご遺族が個人で探した店が、こうした葬儀特有の慣習に対応できるとは限りません。プロに任せることで、弔問客に、失礼のない、質の高い食事を提供できるという安心感は、非常に大きいものです。さらに、「柔軟な数量変更に対応しやすい」というメリットもあります。通夜振る-舞いなどでは、弔問客の数が、直前まで確定しないことがほとんどです。葬儀社と提携している仕出し業者であれば、ある程度の数量の増減であれば、式の直前まで、柔軟に対応してくれる場合が多くあります。これを個人で対応するのは、非常に困難です。そして、何よりも重要なのが「支払いの一本化」です。葬儀に関する様々な費用(会場費、祭壇費、返礼品代など)と合わせて、弁当の代金も、葬儀費用として、後日まとめて葬儀社に支払うことができます。複数の業者に、個別に支払いをする手間が省け、会計管理が非常にシンプルになります。これらのメリットを考えれば、多少の手数料がかかったとしても、葬儀の弁当手配は、専門家である葬儀社に一任するのが、最も合理的で、心のこもったおもてなしに繋がる、最善の選択と言えるでしょう。
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100万円でできる葬儀の具体的な内訳
「予算100万円」で、一体どのような内容の葬儀が可能なのか。その具体的なイメージを持つために、一般的な葬儀費用の三大内訳に沿って、100万円という予算を配分してみましょう。ここでは、参列者30名程度の、標準的な「家族葬」を想定してみます。まず、最も大きな割合を占めるのが、葬儀社に支払う「葬儀一式費用」です。これには、ご遺体の搬送・安置、棺、骨壷、祭壇、遺影写真、式場の設営、運営スタッフの人件費などが含まれます。この部分に、予算100万円のうち、およそ50万円から60万円程度を割り当てるのが一つの目安です。この金額であれば、白木祭壇や、花で飾られた生花祭壇など、標準的で見栄えのする祭壇を選ぶことができます。棺や骨壷も、簡素すぎない、きちんとした品質のものを選べるでしょう。次に、参列者の人数によって変動する「飲食接待費」です。これには、通夜振る舞いや精進落としといった会食の費用と、返礼品の費用が含まれます。参列者を30名と想定した場合、通夜振る舞いの料理代が一人3,000円とすると9万円。精進落としが一人5,000円とすると15万円。返礼品(即日返し)が一つ3,000円とすると9万円。合計で約33万円となります。この飲食接待費は、料理のグレードや返礼品の内容を調整することで、予算をコントロールしやすい部分でもあります。そして、三つ目の内訳が「寺院費用」、すなわち僧侶にお渡しする「お布施」です。これは、地域や寺院との関係性によって大きく異なりますが、一般的な相場として、通夜・告別式の読経と、戒名授与料を含めて、15万円から30万円程度を見ておく必要があります。ここでは、仮に20万円としましょう。以上の三つを合計すると、「葬儀一式費用(55万円)+飲食接待費(33万円)+寺院費用(20万円)=108万円」となり、おおむね100万円という予算の範囲内に収まることが分かります。もちろん、これはあくまで一例です。もし、寺院費用がかからない無宗教葬であれば、その分、祭壇を豪華にしたり、返礼品のグレードを上げたりすることも可能です。このように、100万円という予算は、決して少なくはなく、賢く配分すれば、十分に心のこもった、尊厳のあるお別れができる金額なのです。