通夜式の後、弔問客に振る舞われる食事、「通夜振る舞い」。故人を偲び、生前の感謝を示すこの席で、近年主流となっているのが「弁当」という形式です。大皿料理と比べて、どのような特徴があり、費用はどのくらいかかるものなのでしょうか。通夜振る舞いで提供される弁当の最大の特徴は、「誰でも気軽に箸をつけられる」ように、という配慮がなされている点です。通夜には、様々な関係性の方が、様々なタイミングで訪れます。仕事帰りに、焼香だけ済ませてすぐに帰らなければならない、という方も少なくありません。そんな方々にとって、大皿料理が並ぶ本格的な宴席に着席するのは、心理的にも時間的にも、大きな負担となります。その点、弁当であれば、短時間でさっと食事を済ませることができ、また、持ち帰りを勧めることも可能です。「お時間の無い方は、どうぞお持ち帰りください」と一言添えることで、弔問客は、ご遺族の心遣いを、ありがたく受け取ることができます。弁当の内容としては、故人が亡くなってから四十九日までは、肉や魚を使わない「精進料理」が基本とされてきましたが、現代ではその考え方も柔軟になり、あまり厳格にこだわらないケースが増えています。ただし、お祝い事を連想させる、伊勢海老や鯛、紅白のかまぼこなどは、絶対に避けるのがマナーです。寿司やサンドイッチ、煮物、揚げ物など、冷めても美味しく食べられる、バラエティ豊かなおかずが詰め合わされた、折詰弁当が一般的です。費用相場は、一人あたり二千円から五千円程度が目安となります。この金額の幅は、弁当の内容や品数によって変動します。葬儀社が、複数の価格帯の弁当をカタログで用意していることがほとんどですので、予算や、想定される弔問客の顔ぶれを考慮して、最適なものを選びます。例えば、親族中心の小規模な通夜であれば、少しグレードの高い三千円程度の弁当を、会社関係者など、多くの一般弔問客が見込まれる場合は、二千円程度の、より気軽な弁当を用意する、といった使い分けも考えられます。この通夜振る-舞いの弁当は、単なる食事ではなく、ご遺族からの「感謝」と「配慮」が詰まった、コミュニケーションツールなのです。