ごく近しい身内だけで、静かに故人を見送る「家族葬」。この小規模な葬儀において、食事の席をどうするかは、ご遺族が自由に決められる、重要なポイントの一つです。一般葬のような、形式張った会食は避けたい、と考える方も多いでしょう。そんな時、「弁当」という選択肢は、家族葬の持つ、アットホームで、プライベートな雰囲気に、非常にマッチしたスタイルと言えます。家族葬で弁当を利用する最大のメリットは、その「自由度の高さ」です。通夜振る-舞いや精進落としといった、伝統的な会食の形式にこだわる必要はありません。例えば、通夜の夜は、それぞれが好きなタイミングで弁当を食べ、故人のそばで、ゆっくりと語り合う時間に充てる。告別式と火葬が終わった後は、斎場の会食室ではなく、自宅に戻り、リビングで弁当を広げ、家族水入らずで、故人の思い出を語り合う。そんな、肩の凝らない、温かいお別れの時間を、弁当は可能にしてくれます。また、参列者が少ないため、故人が生前好きだった、特定のお店の仕出し弁当を、個別に手配する、といった、よりパーソナルな演出も可能です。「おじいちゃん、このうな重、大好きだったよね」。そんな会話と共にいただく食事は、何よりの供養となるでしょう。費用面でも、メリットがあります。レストランや料亭に移動すれば、飲食代の他に、席料やサービス料がかかることもありますが、弁当であれば、その費用はかかりません。予算に応じて、豪華なものから、シンプルなものまで、自由に選ぶことができます。では、家族葬の場合、弁当は必ず用意しなければならないのでしょうか。答えは、ノーです。家族葬の最も大切な精神は、ご遺族が、自分たちの望む形で、故人とお別れをすることです。もし、家族全員が「食事は、それぞれで簡単に済ませましょう」という考えであれば、無理に会食の席を設ける必要は、全くありません。特に、一日葬や直葬(火葬式)といった、さらに簡略化された家族葬では、食事の席を完全に省略するケースも、珍しくありません。大切なのは、世間体や慣習に縛られるのではなく、自分たちの家族にとって、何が最も心安らぐ、そして故人が喜んでくれるお別れの形なのかを、家族全員で、正直に話し合うことです。
家族葬での弁当どうする?