「葬儀費用100万円」という予算は、標準的な家族葬を行う上で、一つの適切な目安となります。しかし、いくつかの「落とし穴」にはまってしまうと、この予算を、いとも簡単にオーバーしてしまう可能性があることを、私たちは知っておくべきです。ここでは、葬儀費用が想定外に膨らんでしまう、よくあるケースとその対策について解説します。まず、最も大きな変動要素となるのが、「参列者の人数」です。打ち合わせの段階で「親族だけで30名くらいだろう」と想定していても、故人の訃報を聞きつけた友人や会社関係者が、予想以上に多く弔問に訪れる、ということは、決して珍しいことではありません。参列者が増えれば、当然、通夜振る舞いの料理や、返礼品の数が足りなくなり、追加で発注することになります。この追加の飲食接待費が、最終的な請求額を大きく押し上げる、最大の原因となります。対策としては、打ち合わせの際に、想定される人数を少し多めに見積もっておくこと。そして、葬儀社の担当者に、「もし、料理や返礼品が追加になった場合、一つあたりの単価はいくらですか?」と、事前に確認しておくことが重要です。次に、見落としがちなのが「ご遺体の安置日数の延長」です。多くの葬儀プランには、二日から三日分の、ご遺体の安置料やドライアイス代が含まれています。しかし、友引や連休の影響で、火葬場の予約が数日先まで取れない、という事態は、特に都市部では頻繁に起こります。安置日数が一日延びるごとに、一万円から二万円程度の追加費用が発生します。これが五日間延びれば、五万円以上の、全く想定していなかった出費となるのです。対策としては、葬儀社と契約する前に、「プランに含まれる安置日数は何日分か」「それを超えた場合の、一日あたりの追加料金はいくらか」を、明確に確認しておくことです。さらに、「オプションの追加」にも注意が必要です。打ち合わせの中で、「故人様のために、もう少し立派な棺はいかがですか」「お別れの際に、プロの演奏家による生演奏もできますよ」といった、魅力的なオプションを提案されることがあります。その場の雰囲気や、悲しみの感情から、つい「お願いします」と言ってしまいがちですが、その一つ一つが、費用を押し上げていきます。本当に必要なものかどうかを、冷静に判断する姿勢が求められます。