近年、葬儀の主流となりつつある家族葬ですが、その名前の響きから「安くて楽な葬儀」というイメージだけで選んでしまうと、思わぬ落とし穴にはまることがあります。家族葬を検討するなら、その特性とリスクについてしっかりと勉強し、本当に自分たちの状況に適しているかを見極める必要があります。まず理解すべきは、家族葬の定義が曖昧であることです。家族だけで行うのか、親しい友人も呼ぶのか、その範囲を決めるのは遺族自身であり、明確な線引きはありません。そのため、「どこまで声をかけるか」という判断が非常に難しく、呼ばれなかった知人から後日「なぜ教えてくれなかったのか」と苦言を呈されるトラブルが散見されます。これを防ぐためには、訃報を知らせる際に「家族葬にて執り行います」と明確に伝え、参列を辞退する旨を丁重かつ断固として伝えるマナーを学ぶ必要があります。また、費用面に関しても誤解が多いポイントです。参列者が少なければ飲食代や返礼品代は減りますが、会場費や祭壇費といった固定費は一般葬と変わりません。さらに、一般葬であれば参列者からの香典で葬儀費用の一部を賄うことができますが、家族葬では香典を辞退するケースも多く、結果として遺族の実質的な持ち出し金額が多くなることがあります。金銭的なシミュレーションを事前に行い、予算計画を立てておくことが不可欠です。さらに、葬儀後の弔問客への対応も考慮しなければなりません。葬儀に参列できなかった人々が、後日自宅へバラバラと弔問に訪れることがあり、その対応に追われて遺族が疲弊してしまう「家族葬後の疲れ」という現象も報告されています。家族葬は、故人とゆっくりお別れができる素晴らしい形式ですが、周囲への配慮や事後の対応まで含めたトータルな視点で計画することが成功の鍵となります。
家族葬を選ぶ前に知っておくべきこと